このキャッチコピーは、言わずと知れた名作、綾辻行人さん作の『十角館の殺人』、にあった伝説の一行です。男40歳にして、こういうミステリ小説というジャンルが存在するんだと初めて知り(つまり初心者でも楽しめる)、衝撃を受けた作品です。最近、仕事が少し慣れてきて少しは本を読む時間を見つけられるようになったので、小説を読むようになりました。そこで面白い小説をネットで探していると、出て来る小説たち。
題名だけ読むと全く興味をそそられない小説よ、はっきり言ってマンガの方が面白そう、絵で直感的に自分に合うかどうか分かるし。。でも、人生は中年に差し掛かると、漫画は高価でコスパが悪いのです。子どもたちの養育費、毎日の晩酌代を考慮すると、漫画は最高にコスパが悪い。一本3000円のワインみたいなものです。はっきり言って日々の生活は1000円以下のワインで満足できる、、そういう道楽と書物を同義に扱っていいのかという高尚な論議は発生するかと思いますが、もう髪もハゲテきたように思えるこの中年オヤジにそんな高次な議論をふっかけないでください、と。
さて、遅ればせながらこういう書物から得る人生のスパイスの快感を知った私です。
たった一行が世界を変える、
そんな本の帯のコピーに踊らされました。十角館の殺人。
ラストの、たった一行が世界を変える、とはどこにも書いていない
これがミソです。
本のカバーには、たった一行が世界を変える、と書かれており、これにバイアスがかかり、その語感から、ラストの一行にそれが書かれてある、とせっかちな読者は思うかも知れませんが、実はそんな単純ではありません。
ラストだろう、どうせ、ラストで夢オチとか、TVの中の出来事でしたぁ、とかそういう系のどんでん返しを予想してしまいますが、違います。
というか、夢オチだったとか、そういう今までのストーリーを根本から覆してしまう構成ははっきり言って読者への裏切りであり、時間の無駄、喪失感を生みます。
そういった意味では、この、たった一行が世界を変える、は決してそういう梯子の外し方はしません。
心地よい裏切りを与えてくれます。
ああ、言いたい、これ、人に勧める時に、
ネタバレしたい、
あの一行について走った衝撃、
え!? え!?
とページを過去に遡って見ようと試みずにはいられない戸惑い。
ああネタバレしたい。でもこれはそっと自分の人生の一幕にしまっておこう、こんな楽しみ、ヴァーン!!
なんていう、たった一行、
そのたった一行の衝撃のシーンはこのページ!
ページをめくったら突然訪れます。
この一行にこの作品の全てが込められているという、8文字。一行というか8文字です。このたったの8文字で持っていかれるのです。
ページをめくってドーンと広がる余白の右端に現れる驚き。
ネットニュースなんかでも飛び切り驚くタイトルはすごくシンプルです。ここ数年でいうと、コロナで亡くなった名コメディアンのニュース、
志村けん、逝去
とか、
話題ドラマで競演した2人、
星野源と新垣結衣が結婚
というように、
いつだって人を驚かせる言葉はシンプル、もちろんそのシンプルさにはそれを裏打ちできるだけの事実が必要ですが、
それに似た魅惑の一行があるのです。
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