免色渉とは村上春樹さんの長編小説『騎士団長殺し』に出てくる人物です。
一度読み始めると止められない、中毒性のある内容でした。しばらく夜更かしが続いてしんどかったです。
あのミステリアスな富豪(免色渉)が物語中で放つ異彩な所業に引き込まれずにはおれず、この免色がいるからこそ全体の複雑怪奇な世界観が醸し出されています。免色さんがいなかったら、ただ主人公が女房に浮気されて引きこもりになるだけの話です。
そしてこの私、とうとう入り込みすぎてメンシキさんの、物語中に出てくる肖像画まで描いてしまいました。
※絵のたしなみはないので出来映えについてはご了承下さい。
免色渉の本文内から抜き出した特徴
免色渉の全体像
身なりのよい清潔な感じの中年男性。年齢が分からない印象。
免色渉の身長
170㎝強。肉体はほどよく鍛えられており背筋が伸びている。
免色渉の登場時のファッション
濃い緑色のサングラス、長袖の純白なコットンシャツ、カーキ色のチノパンツ。クリーム色のデッキシューズ。
免色渉の年齢
54歳(ただし目の感じは30代後半に見える)。
顔立ち
端正。小顔ではあるが横幅の広い顔でバランスの悪さもある。ハンサムではあるが警戒心を抱かせるほどではなく初対面でも安心できるレベル。顔はむらなく日焼けしている。
目
切れ長で掘りが少し深い。くっきりと濃い眉毛。困った顔をすると、目尻にチャーミングな皺がよる。
鼻
細くて適度に高い
耳
尖った大きい
口
横に広い。きれいにまっすぐに閉じた細い唇。
髪型
軽くウェーブのかかったボリュームたっぷりの純白の総白髪できれいにカットされている。耳の先が白髪の間から小さく顔をのぞかせる感じの髪型。端正に額が広い。
これをもとに、主人公が書いた肖像画を再現しました。
以下に主人公が免色を描くプロセスを抜粋します。時系列に抜き出しています。
▽▽
私はまず免色の顔の輪郭だけを細い鉛筆で描き
そこにやはり黒色の絵の具を使って肉付けをおこなっていた。
雨に鈍く染まった緑の木の葉に似た色だ。
描きかけの線画の上にその色を加えていった。
それがどのような絵に進展していくのか、自分でも予想がつかなかったけれど、その色が作品にとっての大事な地色になるであろうことはわかっていた。
そしてその絵は、いわゆる肖像画という形式からはどんどん遠ざかっていくようだった。
私はプランも目的もなく、自分の中に自然に浮かび上がってくるアイデアをただそのまま追いかけていった。
雨に濡れた雑木林のもたらす緑色。
この色が私のほしかった色だ。あるいはその「骨格」自体が求めていた色だ。
それから私はその色を基にして、いくつかの周辺的な変化色をこしらえ、それらを適度に加えて全体に変化をつけ、厚みを作っていった。
次の色が自然に頭に浮かんできた。オレンジ。ただのオレンジではない。燃えたつようなオレンジ、強い生命力を感じさせる色だが、同時にそのこには退廃の予感が含まれている。
それは果実を緩慢に死に至らせる退廃かもしれない。
絵筆を手に取り、キャンパスの上にそれを走らせた。部分的にはナイフも使った。
キャンバスに目をやると、そこには既に五種類の色が加えられていた。
色の上に色が重ねられ、その上にまた色が重ねられていた。
ある部分では色と色が微妙に混じり合い、ある部分では色が色を圧倒し、凌駕していた。
その絵が完成に至っていないことが私にはわかった。
そこには荒々しいほとばしりのようなものがあり、そのある種の暴力性が何より私の心を刺激した。
しかしそれだけではまだ足りない。
その荒々しいものの群れを統御し鎮め導く、何かしらの中心的要素がそこには必要とされていた。
私が創りだしたいくつかの色彩が免色の骨格をしっかりと包んでいた。
黒い絵の具で立ち上げた彼の骨格は、今ではその色彩の裏側に隠されていた。
免色にあって、私のこの免色のポートレイトにないもの。それはとてもはっきりしている。彼の白髪だ。降りたての雪のように純白の、あの見事な白髪だ。
絵の具箱の中から急いで白い絵の具をかき集め、適当な絵筆を手にとって、何も考えずに分厚く、勢いよく、大胆に自由にそれを画面に塗り込んでいった。ナイフも使い、指先も使った。
その絵はどのような見地から見ても、いわゆる「肖像画」ではなかった。
第1工程:鉛筆画に黒の筆で肉付け↓
第2工程:緑色を足していく↓
完成↓
以上、合計で4時間かかりました。
疲れましたが、気が済みました(笑)
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