まろびでる、の意味

まろびでる、漢字表記でいうと転び出ると書きます。その意味は、読んで字のごとし転がりながら脱出する、ということです。表現としては、ころげ落ちる、ぽろっと落ちる、思わず露呈する、というような状態を指します。

まろぶところぶ(転ぶ)、まろぶは旧来の言い方

まろぶ、という表現は現代でいう、ころぶ(転ぶ)の旧バージョンの言葉です。文献を遡ると万葉集から明治時代くらいまででしょうか。倒れる、ひっくり返る、こける、という意味です。

ちょうど、平成~令和初頭の大ヒット漫画となった『鬼滅の刃』ではその時代背景が古き時代たる明治~大正時代ですが、

愛すべき中心的キャラである我妻善逸 (あがつまぜんいつ)が、そのキャラ特性(本当は潜在的に天才的武力に長けているのに、普段は小心者であるがためにビクビクしている)から発した言葉で、以下のようなシーンがあります。

合図 合図 合図

合図をしてくれよ 話しかけるなら
急に来ないでくれよ
心臓が口からまろび出るところだったぞ
もしそうなっていたらお前は正しくお前は人殺しだったぞ!!
わかるか!?

 

心臓が口からまろび出る、という意味

これは、差し迫って驚嘆した時の状況を形容する表現の中で、盛りながらも秀逸な表現です。

おったまげた状態(とんでもなくビックリしたとき)を、

口から心臓が飛び出るような、

と表現しますが、人間は心理的に追い込まれると吐き気を催すといいます。

実際に吐き気がするとまで言わなくても緊張でお腹が痛くなることはありますし、日々の学業や仕事のプレッシャーで胃が痛くなることはあります。

そういう心理的に追い込まれて消化器官が逆流しそうな生理的現象を、強度感をもって表現するとき(食べたものが吐き出てします、内臓ごと。。)、心臓が口からまろび出るような、というのでしょう。

現代の表現でいう、口から心臓が飛び出そうな、という語感よりも、圧倒的な生々しさを持ちます。脳裏に浮かぶイメージ図のリアリティーがまったく違うのは、その昔に人類が血塗られた世の中ですぐそばにえげつない死がなまなましく伴っていたからだと思われます。

まろびでる場面は、昔みたいには出現しない

まろびでる場面、これは高度に文明化された現代ではあまり再現される場面がないのかもしれません。道は整備され、ハンデを背負った方たちのためにもバリアフリーで支援設備が考慮され(もっとも行き渡っている状態ではないでしょうけれども)、転倒するようなシーンが昔に比べて機会として減っていると考えられます。

また、まろびでる、というと、命からがら逃げ出る、とか、意図せず露出・露呈した、という場面を指すと思いますが、

道徳的にも周囲の人間関係に対して求められる配慮の規範の水準が上がり、ネットが発達した社会(世間から監視される機会増)にあって、

まろびでてしまう場面は圧倒的に減ったといえるかもしれません。

それゆえに、ただ旧来の表現というのみならず、言葉として、承継の危機に瀕している、といえるかもしれません。

まろびいる、という言葉もある

逆に転入する、という意味のまろびいるという言葉もあります。

これは、ころんで入る、読んで字のごとくですが、転ぶ、つまり、ある地点から重力や惰力に従って別の地点へと移動することをいいます。

つまり、まろびでる、とは逆の意味です。

 

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